大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋高等裁判所金沢支部 昭和30年(く)5号 決定

本籍並住居 小浜市○○○○○番地

少年 無職 大島敏夫(仮名)

抗告人 少年

主文

本件抗告を棄却する。

理由

少年の抗告趣意の要旨は、毋親が病気のため広島県の実家から帰つて、自分が家に居らないことを知り、何処に居るかと心配してそのため病気が悪化する虞がありまた審判の当日保護者たる祖父が出席せず附添人のみであつたから祖父の意見を聞いた上で決定して貰いたい。自分の悪いところは自分で改める自信がある。というにありて、要するに処分の不当を主張するものである。

保護処分の目的は少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整をなすにあるものであつて、本件記録及び少年調査記録によれば、少年は昭和三十年四月二十五日午後十時頃、小浜市○○○二十の○○番地○鳥○幸方に侵入し、同所において、同人所有のラヂオ一台並びに写真機一台及びその附属品一式を窃取したものであることが明らかである。少年は原決定に指摘するように、意思薄弱であり神経質的な傾向強く生活態度は極めて放縦であり、昭和二十九年八月頃より遊郭で遊ぶようになつてからは就職することも考えず、その遊ぶ金は家庭の困窮した事情を考慮するところなく、常に祖父に要求し、これに応じなければ祖父に暴行を加える等素行修まらず加うるに少年には保護者の正当な監督に服さない性癖が認められ、その非行も悪化の傾向にあることが窺われる。そして少年の家庭は実父○夫は少年の出生前昭和十年十二月七日死亡し、実毋シ○コは昭和二十五年四月頃より精神分裂病となり、広島県の実家にて療養中なるも、時々小浜に帰えり広島と小浜間を往復している状態であり、祖父○左○門は明治十四年五月一日生れにして、また祖毋は明治二十二年一月二十二日生れでいずれも老令に達しかつ祖毋は病気勝であつて、家庭裁判所調査官の裁判官に対する調査報告書中、祖父○左○門の陳述によるも実毋並に祖父毋は少年に対する保護能力なく、少年の行状、経歴、性格、家庭の環境等に照し少年を家庭におき少年の健全なる育成を期することは、更に祖父○左○門の意見を徴するまでもなく不可能と認められるので、原審が少年を中等少年院に送致する決定をしたのは相当であつて、その処分に不当があるとは認められない。少年の抗告趣意は理由がない。

よつて少年法第三十三条第一項、少年審判規則第五十条により本件抗告を棄却すべきものとし、主文のとおり決定する。

(裁判長判事 水上尚信 判事 成智寿朗 判事 沢田哲夫)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例